おしらせ

未来へのメッセージ 全日本剣道優勝者・西村英久さん(S58回)

[2016-12-30]

九州学院創立105年 敬天愛人・未来へのメッセージ

「一生懸命に苦しむ」

毎日新聞2016年12月18日 地方版

<小学校3年で剣道を始め、大分県で過ごした中学時代から九州学院の名前を知っていた>

剣道の道場をしていた祖父の同級生に誘われて練習を見に行き、そこで楽しそうだなと始めたのがきっかけです。九州学院は剣道雑誌でも名前がよく挙がっていたし、九州学院中学と対戦しても強いなと感じていた。「行ったら強くなれる」と思っていたところ、声をかけてもらいました。

<考える能力を身につけさせてくれた高校時代の剣道>

入学してプロ集団と感じた。一人一人の志が高く、本当に強くなりたいと思っている。学校の敷地にある寮で生活しながら、中学生も一緒に60人くらいで練習していました。実家は福岡県に近いので最初は熊本弁に戸惑いました。「ぎゃん打って(こういう風に打って)」ってどういう意味なんだと思って(笑)。剣道は対人競技なので相手の心を読まないと勝てない。剣道に限らず全てにおいて、人の気持ちを考えられない人は駄目ということを教わりました。

<筑波大に進学し、剣道を極めるために県警に入った>

 

筑波大学時代に世界剣道選手権の合宿に参加した時、県警で首席師範をされていた亀井徹先生にお世話になりました。九州学院OBの亀井先生は高校時代から知り合いで、「県警に来ないか」と誘ってもらいました。小学生の時から剣道のプロである警察に入りたかったので、願ったりかなったりでした。

<熊本地震では機動隊として救助活動などにあたった。剣道一筋に歩んできたこれまでの人生観が大きく揺さぶられた>

南阿蘇村河陽の高野台団地や土砂崩れ現場、阿蘇大橋の崩落現場で捜索救助をしました。初めて大規模災害で長期にわたって活動し、人が簡単に死んでしまう現場を間近に見た。機動隊の出動が少なくなってきた7月に剣道の練習が再開されたが、「剣道をやる意味があるのか」と何度も考えた。剣道する時間があったら、もっと人を助けられるんじゃないかと。「日本一、世界一になりたい」と思い、好きだから剣道をやってきたけど、スポーツだから死んでしまったら何も残らない。これまでやってこなかったことをしながら楽しく過ごした方がよいのではないかとも思いました。

<それでも剣道が好きだと思った>

やっぱり剣道が好きだと再確認して、もう一度、日本一、世界一になりたいという目標を思い出しました。死を間近に見たからこそ、一生懸命に苦しみ、悲しみ、楽しんでほしいと思う。それが人間的な価値につながってくるのではないでしょうか。今の目標は来年の全日本選手権で再び日本一になり、2年後に開催される世界大会の日本代表に選ばれたいと思っています。

■人物略歴

20151104k0000m050060000p_size7-thumb-300x442-7255.jpgにしむら・ひでひさ

大分県中津市出身。2006年に九州学院高卒業後、進学した筑波大の3年生で全日本学生剣道選手権を制覇。現在は県警機動隊。昨年11月に行われた第63回全日本剣道選手権で初優勝し、今年の同選手権は準々決勝で敗れた。